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半側空間無視:なぜ左で多い

まとめ

空間把握

右脳:両方 左脳:右のみ

『正面を向いてください』!!。

出来ましたか?でもそれは本当に『正面』ですか?『右』でもなく『左』でもなく『正面』ですか・・・???

・・・なんて禅問答ですね、『世にも奇妙な物語』みたい。

今回は『左右』、そこから発生する『正面』に関するお話し。

そして左右一方の空間が消失する『半側空間無視』の話しです。以前の記事『言語聴覚士』で高次脳機能障害について簡単に述べました。まだ読んでいない方は下記リンクから飛んで読んでみてください。☆リンク☆

優位/劣位半球

まずは基本のキから。

我々の大脳は右脳、左脳に大きく分かれています。

そのうち言語理解・機能を担当している方を形式的に『優位半球』、担当していない方を『劣位半球』と言います。多くの人間は左脳に言語中枢があるため一般的に左脳が優位半球となり、一方右脳は劣位半球とされています。でも左利きの人は右が優位半球だったり、そもそも両方の脳に言語中枢があったりします。

実は最初のうちは機能ごと、例えば視覚や空間認知ごとに〇〇の優位半球は△と言っていました(例:注意機能の優位半球は右脳)。

でも機能ごとに優位・劣位が左右で変わると混乱するので、なら一番研究の進んでいた『言語機能』で便宜的に左脳を優位半球、右を劣位半球とした方が楽では!?っという歴史があり、今のように左脳が優位半球、右脳が劣位半球と呼ばれるようになりました。

では半側空間無視に関わってくる空間把握は右脳・左脳のどちらか?

答えは空間把握は劣位半球つまり右脳が主に担っています(=右脳は空間把握優位半球とも言う)。具体的には右脳は左右、左脳は右の空間を担当しています。ここが大きなポイントです。

空間把握

右脳:両方 左脳:右のみ

ここで脳梗塞や事故で右脳が損傷したとすると、

右脳×⇒左右の空間×

左脳〇⇒右の空間〇 左はもともと×

⇒左脳による右の空間把握しか残らない。

つまり右だけの空間把握のみが残存し、左が消えます。これが半側(左側)空間無視の起きる理由です。

多くの人が上記のように右脳が左右の空間、左脳が右担当です。しかし一部の人(特に左利き)では右脳・左脳の働きが別だったり、両方が左右の空間を担当していたりします。なので一概に右脳損傷⇒左半側空間無視とはならない場合もありますし、空間把握の役割分担次第では右半側空間無視もあります。

正面が右へシフトする

さて我々が『正面を見てください』と言われたら、左右の空間把握をしちょうど真ん中である正面を見ます。

でも左半側空間無視の場合は、左半分がこの世から消えます。

『正面を見てください』と言われると左が無いので鼻の延長線上(右の空間の一番左端)と右との真ん中、つまり右斜め45度を見ます。そこが半側空間無視の患者の正面なのです。

ちなみにこれは見るっという視覚だけの話ではありません

左という空間自体が消失するので左に存在する手足・物体も消失します。なので左の肩や脚を触ってみてと言っても理解できません。

歩く時も左が無いので、左にある障害物(人・車いすなど)にぶつかりますし、右方向へ常に歩いていきます。

検査バッテリー

比較的検査方法の多い高次脳機能障害です。

総合的なのはBITですね。ADL面ではCBSです。

ベッドサイドで簡便に可能なのは、線分抹消、2等分試験、鼻描かせる、くらいですね。

混同しやすい同名半盲

半側空間無視をよく混同されるのが同名半盲という症状です。眼の神経や視覚中枢(後頭葉)がやられることで、視野の左(右)半分が消える現象です

どちらも左右半分が消える現象ですが、決定的に違うのは『消えていると理解しているか、どうか』です。半側空間無視は理解できず、同名半盲は理解できています。同名半盲は半分が見えていないだけで、空間・概念はあります。

なので同名半盲の人は視野を補おうと、首をよく回しています。一方半側空間無視の人はキョロキョロしません。見ただけで両者の違いは分かります。

治療

治療方法で決定的な特効薬はないです。

治療の主眼は『いかに左の物を右で知覚させるか』にかかっています。

左を補う・認識させていくようにしていくため、左側に目立つもの(蛍光色のタオルや、派手な人形、音出すもの)を配備したり、プリズム眼鏡(光を屈曲させる)を装着して左を物体を右で見えるようにしたりします。またぶつかった時用にパッドなどの防具を装着、柱や家具にクッションや目立つもの取り付けたりします。

でも根本的な半側空間無視の治療は現段階では無いです。研究段階です。治療では無いですが、家族や周りの人への周知が非常に重要となってきます。

空間把握

右脳:両方 左脳:右のみ

以上です。またお願いします。

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