症例問題

筋電図症例問題集⑥:突然腕が動かない

筋電図の知識に関してはリンク参照くださいm(__)m リンク:筋電図関連の記事一覧

臨床像

主訴:右腕が突然動かない

現病歴:68歳男性。1か月前に突然頸部痛を認め整形外科受診、頚椎症と診断されNSAIDS内服で経過観察となった。疼痛改善後から徐々に右上肢全体の筋力低下を認めた。精査目的で筋電図施行となった。

既往歴:特記事項なし

身体所見:上腕二頭筋で著名な筋力低下・萎縮を認めた。三角筋は正常。C7-Th1もMMT3-4程度の低下を認めた。しびれも前腕外側を最強点として全体的に認めた。

⇒さてここまでの情報でどの疾患の可能性、どのような検査プランを考えますか?考えてから次の神経伝導検査・筋電図に進んでください。

神経伝導検査

検査では以下の所見を認めた。

右筋皮神経でCMAPの電位低下・著名な左右差を認めた。外側前腕皮神経は導出不可。

正中神経でCMAP/SNAPのNCV/Amplitudeの軽度低下を認めた。

尺骨神経・橈骨神経は正常。

⇒さてここまでの情報で、次の針筋電図はどの筋肉を刺しますか??

針筋電図

・上腕二頭筋Biceps、母指外転筋APBで安静時❛脱神経電位❜認め、多相波の増加・干渉パターンの減少を認めた。

・菱形筋Rhomboid、撓側手根伸筋ECU、第一背側骨間筋FDI、脊柱起立筋群C6はいずれも正常所見であった。

⇒さて診断は何でしょうか?また障害の程度、急性期か慢性期か、予後は?

解説

①臨床像

頸部・肩関節痛からの一側上肢筋力低下・萎縮を認めたら、第一に疑うのは神経痛性筋委縮症neurological amyotrophyです。中年以降の男性に多い疾患で、原因は腕神経叢炎と考えられています。

早期診断しステロイドなどの抗炎症、廃用・拘縮を予防するためのリハビリが極めて重要です。でも機能障害が残存するケースが多いです。

②神経伝導検査

腕神経叢のどこでやられるかで多様な検査所見が出てきます。ただ大事なのはSNAPの低下があること。広範囲に上肢がやらせるのは脊髄・腕神経叢がメインですが、脊髄病変ではSNAP低下しないのが特徴的。SNAP低下の時点で後根神経節より遠位、腕神経叢障害を疑います。

今回は腕神経叢の外側神経束での腕神経叢炎を想定。そのため筋皮神経メインに、正中神経も一部損傷します(正中神経は内側&後神経束からの枝もあるため障害は軽度)。

③針筋電図

筋皮神経支配のBiceps、正中神経支配のAPBをまず見ます。

その後頸髄C5および腕神経叢で神経束よりも近位は正常であることを見るため、菱形筋Rhomboid・脊柱起立筋Paraspinalを調べ正常であることを調べます。

一応他の腕神経叢が正常であることを調べるために、上腕三頭筋Tricepsや第一背側骨間筋FDIもチェックします。

④診断

腕神経叢障害(外側神経束)、急性期。手術は特に無いのでステロイドなどで炎症を抑えるのが重要。ただしそこまで効かないのが現状です。

 

以上です。またお願いします。

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