筋電図

筋電図の進め方④:前骨間神経麻痺

まとめ

神経伝導検査:正中神経の運動〇、感覚〇

針筋電図:APB〇、PQ×

前回までの手根管や肘部管症候群に比べると頻度としては低いです。でも筋電図、特に針筋電図が診断に非常に有用である疾患ですので覚えておいてください

前骨間神経麻痺=正中神経麻痺の一種

前骨間神経麻痺は正中神経麻痺の1つのタイプであり特徴は、特定の運動が出来なくて感覚は正常な点です。詳しく見ていきましょう。正中神経は肘関節辺りで浅枝と深枝の2つに分かれます。それぞれの働き・支配筋肉は

浅枝:感覚全体とAPBなど深枝以外の筋肉

深枝:PQ(方形回内筋)、FPL(長母指屈筋)、FDP(深指屈筋示指・中指)

前骨間神経は深枝が障害される病気です。臨床所見として有名なのが『Tear Drop Sign』です。OKサインをしてもらった際に母指及び示指屈曲が出来なくなるためOKサインがつぶれて、まるで涙のしずくのようになる現象です。下図のように一方は〇が出来ていますが、片方ではつぶれた感じとなります。母指・示指のIP/DIP関節が屈曲できないため起きる現象です。

 

他には母指IP関節(第一関節)の屈曲が出来なくなるので、ノック式のボールペンが使いにくくなるという症例から前骨間神経麻痺が見つかった症例もありました。

また方形回内筋も障害されるのですが回内筋は他に円回内筋があり、代償されるので症状としてはあまりでないです。

神経伝導検査

①正中神経(運動・感覚神経)

ポイントとなってくるのは感覚神経と通常正中神経を調べる時に電極を貼るAPBは浅枝なので障害されない、つまり正中神経の神経伝導検査は運動・感覚ともに正常となるのです。これが手根管症候群との大きな違いです。また尺骨神経はあまり調べないです。

針筋電図

絶対刺す筋肉:APB(短母指外転筋) PQ(方形回内筋)

最大の特徴はAPB〇PQ×となることです。方形回内筋は正中神経深枝の最遠位筋ですので、これが障害されていれば近位のFPL/FDPも障害されているとみなします。余談ですがFPLはまだしFDPは特に刺し分けるのが非常に難しいです。なぜならFDPは示指・中指は正中神経(前骨間神経)で異常、環指・小指は尺骨神経支配なので正常なのですが。これらは隣接しておりミスにより誤った結果が出やすいため注意です。最初からしない方が良いです。

最初の方で述べたようにこの疾患に関しては、針筋電図が非常に重要となってきます。てか臨床症状以外では筋電図しか鑑別する方法が無いです。最初の方で述べたような症状を認めた際は筋電図のことを思い出してください。

まとめると

・APB〇FDI〇PQ×⇒前骨間神経麻痺

・APB×FDI〇PQ×⇒正中神経障害

・APB×FDI×PQ×⇒末梢神経障害・腕神経叢麻痺・脊髄疾患

以上です。またお願いします。

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