医学雑談

脊髄損傷③:肺炎・呼吸不全

脊髄損傷には3大死因があり、尿路感染症(おしっこからバイキンが血液に入り込む)、褥瘡(床ずれ)、そして肺炎・呼吸不全です。特に一番の死因は肺炎・呼吸不全で、高齢者頚髄損傷では約半数に上ります。

なぜ肺炎・呼吸不全になるのか?

それは脊髄損傷では呼吸に関わる筋肉もマヒするためです。十分な息が吸えず・吐けないため、人工呼吸器をつけたりします。また痰をうまく排出できないために肺炎や窒息で亡くなる方も多くいらっしゃいます。

『呼吸』。普段何気なくやっていますが、呼吸は多くの筋肉が関わる複雑な動きをしています。

下図は呼吸に関わる筋肉の一覧です。

  筋肉 作用 支配神経分節
呼息・吸息 横隔膜 呼吸全般で収縮・弛緩 C3-5
呼息 平静呼息 内肋間筋 肋骨を下げる Th1-11
深呼息 広背筋 肋骨を下げる C6-8
腹筋群(外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋など) 収縮し腹圧を上げる 外腹斜筋:Th5-12  

内腹斜筋:Th8-L1     

腹横筋:Th5-L2

吸息 平静吸息 外肋間筋 肋骨を挙げる Th1-11
深吸息 胸鎖乳突筋 頭部固定時、鎖骨を挙上させる 副神経、C2-3
斜角筋群 肋骨を挙げる C3-8
大胸筋 上腕固定時、肋骨を挙げる C5-Th1
前鋸筋 肋骨を下げる Th1-9

はい、多すぎてよく分かりませんね。これだけ多くの筋肉が関わっているのを伝えたくて載せました。一番知ってほしいのが『横隔膜』が呼気(息をはく)、吸気(息をすう)のいずれにも関わっている点です。

呼吸において、横隔膜はエースで4番です。その働きも偉大で、吸気の7割は横隔膜が担っています。ちなみに呼気は収縮した横隔膜の弛緩(≒脱力)と、息吸って伸ばされた肺が縮まる事で行われます。リラックスモードなのであまり気合入れて息を吐くことができません。

実際に皆さんにもやってもらいたいのですが、息を吸って吐く際に、吸う方が短時間で行えます。実際吸う時間に比べて、吐くのは2倍時間を要します。吸うのは筋肉を収縮させるため早くできますが、吐くのは弛緩、脱力なので早くできないのです。

脊髄がC3-5で損傷すると、エースで4番の横隔膜が弱ります。呼吸が自分で困難になるため、人工呼吸が必要となっていきます。でも運動麻痺の改善と同様、横隔膜も時間とともに回復することがあります。たとえC3-5が損傷し横隔膜の機能が落ち、人工呼吸器つけても、7割近くは止めることができます。

人工呼吸器をやめることを離脱と言います。離脱の仕方はやや強引で、『試しに人工呼吸器外しちゃえ』っというものです。はじめは30分、徐々に60分、90分、120分と伸ばしていきます。これをSBT(自発呼吸テスト)と言います。120分外せられればもうOK、離脱します。でも睡眠時無呼吸症候群があると難渋することもありますので注意してください。

人工呼吸器を離脱すると何がいいか。それは肺炎の発生率が減るからです。

VAPVentilator-Associated Pneumonia:人工呼吸器関連肺炎)は人工呼吸器をつけることで誘発される肺炎です。人工呼吸器って人体からしたら異物なんです。そのため排除しようとして痰が多く分泌されます。またその痰および人工呼吸器の自体に細菌が繁殖しやすいため、VAPが起きます(適温多湿のため)。

発生率は人工呼吸器開始して、~5日:3%/day、5-10日: 2%/day、10~:1%/dayと言われており、多くの脊損ではほぼ起きます。VAPによって死亡率:30%増加、在院日数:8‐11日延長すると言われ医学的に重要です。対策として感染対策と早期離脱です。異物が体内に入っていて良いことはないです。早期離脱こそ患者の生命を守るのです

お疲れさまでした。次回は性機能について述べたいと思います。

ではまたお願いします。

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