検査

筋電図の進め方①:手根管症候群

筋電図シリーズ、パート3。筋電図を受ける人の中で最多の病気『手根管症候群』についてです。総論などの以前の記事はカテゴリー『筋電図』から飛んでくださいm(__)m

まとめ

CMAP Distal latency>4.4ms

2L-int/Ringでそれぞれ潜時差が>0.5 ms 

手根管症候群=正中神経麻痺

手根管症候群は以前書いた記事『正中神経麻痺☆リンク☆』の正中神経が麻痺して手指機能・感覚が低下する代表的な病気です。症状は①母指~環指の感覚が鈍い・しびれる②指が動かしにくいが代表的です。特に②は服のボタン掛けや洗濯ばさみの使用時に自覚することが多いです。これらは正中神経が障害されることで起きます。

では実際に何を調べるか見ていきましょう。

神経伝導検査

誘発筋電図では下記のように行っていきます。

①正中神経(運動・感覚神経) 絶対やる

②尺骨神経(運動・感覚神経) 補助診断

正中神経はまず最初に絶対に調べます。

手根管症候群では特に、手首での刺激時のCMAP(Compound Muscle Action Potentials複合筋活動電位≒波形)の最小潜時が重要となってきます。最小潜時とは電気刺激してからCMAPが見られる最短時間の事で、4.4ms以上だと手根管症候群を疑います。

また肘関節刺激―手関節刺激との時間差から神経伝導速度(NCV:Neuro conduction velocity)を求めますが、純粋な手根管症候群では正常値〜軽度低下となります。手根管症候群は手関節で正中神経がやられるので、肘~手関節の神経は正常となることが多いからです。ただし神経が末梢から変性するdying-backが起きると異常値となります

正中神経の感覚神経は多くの場合遅く・小さくなっているか、まったく認めないことが多いです。感覚神経のほうが運動神経よりも細いため早期に障害されてしまう、感覚神経の波形SNAP(Sensory Nerve Action Potentials)はCMAPの1,000分の1と非常に小さいためノイズと見分けがつきにくいからです。

尺骨神経は手根管症候群以外の末梢神経障害(糖尿病・抗がん剤・神経疾患)や腕神経叢障害・頚髄症などを除外するために用います。施行した方が良いですが後述の針筋電図(FDI:第1背側骨間筋)で代用する時もあります。

比較試験

神経伝導検査のオマケでやることが多いのが比較試験です。

これは手根管症候群が正中神経×尺骨神経〇の性質を利用したもので代表的なのが

①2L-Int(運動神経)②環指比較法(感覚神経)です。

①2L-Int

2L-Intとは第2虫様筋ー掌側骨間筋のことでそれぞれ第2虫様筋は正中神経、掌側骨間筋は尺骨神経支配です。これらは隣接しており電気刺激時に同じような波形を記録電極で読み取ることができるので、その性質を利用し同距離(12-14cm)からの正中・尺骨神経刺激時の最小潜時差を比べます。

0.5ms以上、正中神経刺激時の最小潜時が遅いと手根管症候群と診断されます。

余談ですが通常の正中神経CMAPはAPB(短母指外転筋)という筋肉で測定するのですが、この筋肉は早期にダメージを受けやすく検査で波形が取れないこと多々あります。でも2L-IntはAPBに比べて最後までスペアされやすいため、APBの萎縮した患者で非常に価値のある検査ですので是非覚えておいてください。

環指比較法

解剖学を学んだ人なら知っていると思いますが環指(薬指)の感覚は撓側は正中神経、尺側は尺骨神経で支配されている部位です。なので環指に電極を貼り同距離(10-12cm)からの正中・尺骨神経刺激時の最小潜時差を比べ、0.5ms以上の正中神経刺激時の最小潜時が遅いと手根管症候群と診断されます。

針筋電図

針筋電図では以下のように調べていきます。

①絶対刺す筋肉:APB(短母指外転筋)

②ほぼ刺す筋肉:FDI(第1背側骨間筋)

③時折刺す筋肉:C6,7,8の筋肉、Paraspinal

APBとFDIはほぼ刺します。APBは正中神経の、FDIは尺骨神経支配の最遠位筋ですので、それらが正常ならその支配神経全体は障害されていないだろうっという原則のもと調べています。またAPBとFDIはカップルマッスルと言われ支配神経の高さ(C8,Th1)が一緒なので、脊椎・脊髄病変の否定のために2つの筋肉の所見の差を調べます。手根管症候群ではAPB×FDI〇となります。

上記APB×FDI〇となった場合はそこでほぼ検査終了。ですが一応正中神経支配の筋肉を詳しく調べるため手関節より遠位のAPBと近位のFCR(撓側主根屈筋)やPT(円回内筋)を見ます、気分で。他には感覚障害の強い部位からC6,7,8の筋肉を選んで調べます。例えば中指(中指)の症状が強い場合はC7のTriceps(上腕三頭筋)調べたりします。それらが正常の場合は手根管症候群の疑いが増します。

APB×FDI×(FCR〇orPT〇)の時、Paraspinal(傍脊柱起立筋群)も刺すことがあります。Paraspinalは最近位の筋肉なので病変が末梢病変か中枢病変(脊髄病変)か鑑別するのに有用です。要約するとParaspinal〇⇒末梢神経障害や腕神経叢障害、Paraspinal×⇒脊髄病変。

すこし針筋電図の所見と疾患をまとめてみると

 

・APB×FDI〇(FCR〇orPT〇)

 ⇒手根管症候群

・APB×FDI〇(FCR×orPT×)

 ⇒正中神経麻痺or腕神経叢麻痺or脊椎脊髄疾患

・APB×FDI×(FCR〇orPT〇)Paraspinal〇

 ⇒末梢神経障害or腕神経叢障害(あまり無い)

・APB×FDI×(FCR〇orPT〇)Paraspinal×

 ⇒脊髄病変

・APB×FDI×(FCR×orPT×)

 ⇒腕神経叢麻痺or脊椎脊髄疾患

まぁ~こんなイメージですが詳しくは正書を見てくださいm(__)m

こうして手根管症候群だけなのか、他の要因がかんでいるのかを見ていきます。検査自体は手根管症候群単独なら10-15分、その他が加わっても30分以内には終わります。

 

以上です。またお願いします。

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