医学

脊髄損傷:損傷高位ごとに出来る事・動作・ADL

まとめ

高さ1つで世界が変わる

細かい動作は正書にツラツラ書いていますので、そちらをご参照ください。ここでは肝なポイントを述べていきます。

前にも述べましたが脊髄損傷は損傷高位が1つでも違うと、出来る動作・ADL(日常生活動作)がガラっと変わります。特に頸髄領域ではそれが著しく、まさに世界が変わります。

なお表記としてはC5損傷=C5以上の機能は残存している、ことを意味します。

C3以上

・動く筋肉:顔面・頸部の筋肉・僧帽筋

顔面や頸部が動くので実は『Chin control』という、アゴで車いすを操作する機械使えば自走可能です。でも安全性を考慮して付き添いがつくことがほとんどであり、また基本的にADLは全介助レベルです。

この領域最も重要なのが呼吸機能です

呼吸で最も重要な『横隔膜』、その支配神経である横隔神経(C3-5 C4メイン)麻痺によって動きが完全or不全麻痺となります。吸う・吐くの両方で機能障害が出やすく、多くの患者で人工呼吸器が外せない可能性があります。

ただししっかりアセスメント・プランすればC3.C4では7-8割外せます(C2以上はやはり厳しい)。

動作可能となる代表的な筋:頸部全体の筋肉(すごい動作・ADLが劇的に変わるものは無いです。)

C4

動作可能となる代表的な筋:横隔膜⇒呼吸

横隔膜が動くようになるので多くの症例で人工呼吸器が必須ではなくなります。ただし夜間(一般的に呼吸は浅く、喚起量が落ちやすい)だけ呼吸補助のためにCPAPなどを併用することはあります。

オマケですが呼吸は基本的に吸気、吸えれば問題ないです。呼気は吸気で膨らんだ胸郭や下降した横隔膜の自発的な運動で行われるので麻痺しても障害が軽度にとどまります。一方吸気を担う横隔膜(横隔神経)は吸気の7割を担うエースで4番なので麻痺があると障害が大きく出ます。

さらにオマケですが吸気は横隔膜の収縮によって素早くできました、呼気は自発的運動なのでゆっくりしかできません。なので吸気と呼気の時間は1:2となり、呼気の方が時間がかかります。

ADLは引き続き全介助レベルです。

C5

動作可能となる代表的な筋::三角筋・上腕二頭筋⇒肩関節外転&屈曲、肘屈曲

ここら辺からかなり可能な動作・ADLが変わってきます。

まず車いすの自走が自力で可能になります。ただし配慮が必要でハンドリム(車いすをこぐための車輪)をゴムでコーティングし、革手袋を装着し摩擦を増やすようにします。C5損傷では肘を曲げることが出来ます。曲げた後脱力し、重力で肘を伸ばす際に革手袋とハンドリムを擦らせてその摩擦で車輪を進めます。ただし耐久性の無い老齢者では無理せずに電動車いすに落ち着くこともあります。

多くのADLは介助が必要ですがBFO(Balanced Forearm Orthosis,MOMO/バランサーなど)を用いれば食事など、上肢を使用した動作も自己で可能となります。

ただ整容・更衣・排泄などは厳しいです。

C6

動作可能となる代表的な筋:撓側手根伸筋⇒手関節背屈、

一番大きく機能・ADLが変わる高さです。

一番重要なのは手関節背屈によって『テノデーシス』が可能になり、物がつかめることです。テノデーシスとは手首を反らした時指が曲がり、逆では指が伸びる現象です(下図)

それだけだと力が弱いので補助装具を使えばほとんどの上肢機能が可能となり、工夫次第で運転も可能です。また男性なら自分で排尿する自己導尿も可能。これは生命予後を左右する非常に重要な機能です。

またC6があれば移乗も実は可能です。

その際は手関節背屈しベッドに強く押し当てるorひもやバーで固定した状態で、肩関節を大胸筋で水平内転させて肘関節を伸展位でロックして行います。(下図は右手)

C7

・動く筋肉:上腕三頭筋⇒肘伸展、撓側手根屈筋⇒手関節掌屈、総指伸筋⇒手指伸展

上腕三頭筋によって肘関節伸展が可能となり、移乗が簡単になります。

実はC6とそこまで大きくADLが変化はしませんが、安定性は増します。また女性はC7から自己導尿が可能となります(C6の一部でもできるが)。

C8/Th1

動作可能となる代表的な筋:手内筋群、手関節&手指屈筋群⇒手指屈曲や外転などの多彩な動き

この高さの筋は手指の動きを司ります。このレベルの機能があればほとんどのADLは自立し、社会生活も問題なく過ごすことが出来ます。

タイピングなども早く可能となるので社会生活・障害者雇用の幅は広がります、正直。

また装具次第(Prime-Walk ウーパル)など使えば歩行も訓練レベルでは可能となってきます。階段はやはり厳しいですね。

L2

動作可能となる代表的な筋:股関節屈筋群(腸腰筋など)⇒股関節屈曲

股関節を屈曲することが出来ますが、膝関節が意図せず曲がる膝折れは起きます。

なので長下肢装具+両手杖を使用が必要ですが、歩行可能です。でも耐久性・安全性考慮すると車いすレベルです。

L3

動作可能となる代表的な筋:大腿四頭筋⇒股関節屈曲・膝伸展

膝関節伸展筋である大腿四頭筋が効きますのでかなりの歩行・移動能力を獲得できています。ただし下腿・足関節の不安定性はあるので短下肢装具(多くは金属支柱)は必要となってきます。

膝の安定性・下肢クリアランスが良くなるので階段・エスカレーターも可能となります。

L4、L5以下

動作可能となる代表的な筋:下腿筋群(主に腓骨神経領域)⇒足関節背屈

L3とほとんど同じ機能です。ただしL3では金属支柱での短下肢装具でしたが、L4-5ではプラスチック装具・オルトップなど簡素・軽量な装具で事足りることが多いです。また杖無しでも歩ける方は沢山います。

S1以下

あまりここだけが損傷受けることは無いです。あるなら交通事故や馬尾腫瘍ですね。基本的にADLは排便・排尿以外は問題ないです。残念なことですが排尿や排便はS4-5、本当の末端の機能なので脊髄損傷で無傷ということはないです。

このように脊髄損傷は高さ一つで可能な機能・動作は大きく変わります。

全部覚えるのは大変だと思いますのでそれぞれの高さで動く筋肉を覚えて、その筋肉の働きから考えると良いかと思います。

高さ一つで世界が変わる

ざっと重要なポイントを述べてきました。細かいことは正書ご参考ください。

以上です。またお願いします。

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