まとめ:みぞおち⇒右わきばら・下腹部に移動する腹痛にはご用心!!
虫垂炎、別名もうちょう。
病気の中でも、トップクラスに有名な病気ですね。患者として多いのは思春期~青年期の方です。今後もうちょう・盲腸は、医学用語の虫垂または虫垂炎と表記します。
☆虫垂の場所・働き
下図の大腸の模式図です。左下のピロっと下に出ている、赤字でappendixと名前が付けられた部位が虫垂です。虫垂は盲端(入口のみで、出口が無い)の腸、から盲腸との別名が出来ました。
参照:http://www.paulnoll.com/Oregon/Inspiration/humor18-appendix-01.html
虫垂はもともとは草食動物で発達していた器官です。その長さ数mです。そこで腸内細菌を養殖して、食物繊維を分解する手助けをさせているらしいです。人間は雑食ですが、消化器官の構造は肉食動物に近いです。なので人間では、要らないものと認識されていました。
☆免疫細胞の基地??
2014年の日経新聞で、虫垂が腸内の免疫細胞の基地となっている可能性が報道されました。
参照:http://www.menekiplaza.com/column/tyusui.html
腸には多種多様の腸内細菌がいます。当然良いやつ・悪いやついます。それらに対応するために、任げも多種多様・大量の免疫細胞を用意する必要があります。腸の壁の厚さは数㎜です。突破されたら、そこはもう体内。腹膜炎で死にます。そのため細菌の侵入を防ぐ目的で、腸には人体で最も多くの免疫細胞が多数配備されています。免疫細胞の前衛基地として、不要と思われた虫垂が今脚光をあびています。
☆虫垂炎
そんな大事そうな虫垂ですが、一つやっかいな病気があります。虫垂炎、別名もうちょう。先ほど盲端の腸で盲腸と言いました。つまり虫垂(盲腸)の中に入った、内容物(消化液・糞便・細菌)は外に出ていきにくいのです。一応排出能力は虫垂にもありますが、不十分な事があります。
その結果、細菌が繁殖して虫垂炎になります。この虫垂炎ですが、糞石という腸内にできる『石』が虫垂の入り口・中にあると重症化しやすいです。そのため糞石にある虫垂炎は100%手術です。*クジラの糞石は『龍涎香』というお香の原料で、数十~数百万する*
☆虫垂炎の症状
最初は吐き気や嘔吐、胃の辺りのもやもや感など、普通の胃腸炎のような症状です。しかし虫垂炎の症状で最も有名なのが『移動する腹痛です』。
最初はみぞおち辺りが痛みます。痛まずになんかもやもやするっという違和感のパターンもあります。そして徐々に右わき腹・下腹部、つまり虫垂の辺りに痛みが移動して行きます。
理由としては、痛みには内臓痛と体性痛があるからです。内臓痛は自立神経(交感・副交感神経)、体性通は通常の痛みの神経が反応しておきます。最初に自立神経が刺激され、内臓痛が発生しみぞおちが痛くなります。その後体性痛で右わきばら・下腹部が痛んでくるのです。
下図は虫垂炎の診断の際によく用いるスコア、調査票みたいなものです。特に左のAlvarado Scoreはよく用いられており、合計7点で虫垂炎と診断します。
参照:エビデンスに基づいた子どもの腹部救急診療ガイドライン2017
☆虫垂炎の治療
手術と抗生剤投与が選択肢としてあります。手術は昔からよく行われ、現在も治療のスタンダードです。特に糞石のある虫垂炎・炎症が強い虫垂では、虫垂破裂の可能性が高いので手術になります。
昔は開腹(大きく腹の皮膚切る)でしたが、今は2cmほどの穴を複数個開けて手術する腹腔鏡下虫垂切除術がメジャーです。余談ですが腹腔鏡ではほぼかならずへそに穴あけます。元々くぼんでいて傷が目立ちにくいからです。でも神経が一定数集まっているので術後の痛みは比較的強い部位です。傷か痛み、どちらを選ぶかですね。
虫垂炎の手術は約30~60分で終了します。手術の中では短い部類です。この虫垂切除、そして鼠径ヘルニア修復・胆のう摘出は外科手術の3大登竜門です。医者3-4年目の外科医が指導されながらやっていることが多いです。でも案外難しいです。
もう一つの治療法は抗生剤投与。腸内細菌をターゲットにした抗生剤を内服・点滴します。
よく用いられるのは点滴だとセフメタゾールなどの第2セフェム系、内服は難しくて嫌気性菌をカバーするためにオーグメンチン使っていました(内服での第2セフェムっていまいち)。みんな大好きクラビットは嫌気性菌には弱いので使いませんでした。
この抗生剤で虫垂炎を直すことを、別名『散らす』と言います。先の糞石の無い患者、どうしても入院できない患者で選択します。でも一時治っても、再発のリスクあるので個人的には手術した方が良いと思っています。
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