筋電図の進め方⑦:下垂足(腓骨神経麻痺)

今回は足首が上に上がらない(背屈×)病気の代表『下垂足』です。足首が上がらないのでつま先が地面に引っかかって転倒リスクありますので正しく対処する必要があります。

筋電図に置いて下垂足で重要となってくるのが『どこでやられているのか』を正確に診断することです。具体的には腓骨神経(総or深)or坐骨神経orL4/5のどれかを見極めていきます。でも臨床症状で大体当たりはつきます。

下垂足に加えて

①:下腿外側に感覚障害ある 〇⇒総腓骨神経麻痺、×⇒深腓骨神経麻痺

②:脛骨神経の支配筋肉(下腿三頭筋)も弱い⇒坐骨神経麻痺

③:②に股関節外転(中殿筋)も弱い⇒L4/5障害

これらの身体所見が検査施行前に非常に重要ですので覚えておいてください。

神経伝導検査

調べる神経:腓骨神経、脛骨神経、腓腹神経

腓骨神経では測定部位は①足関節②腓骨頭下③膝窩部で行います。特に②-③で腓骨頭を間に必ず入れるようにします。腓骨神経麻痺で一番障害が発生しやすいのは腓骨頭での神経圧迫によるものなので、そこでの障害を調べるのが重要です。その際は②-③は9㎝以上は離した方が測定誤差が出にくいです。

脛骨・腓腹神経は末梢神経障害・坐骨神経障害・L4/5障害を見極めるために行う必要があります。

針筋電図

絶対調べる:TA(前脛骨筋)

場合によって調べる:Gastro(腓腹筋)、Biceps short head(大腿二頭筋短頭)、PB(短腓骨筋)、G.med(中殿筋)

TAは下垂足の主な原因なので必ず調べます。逆にTAが問題なければそこで検査終了です。

Gastroは坐骨神経麻痺の除外で調べます。

Biceps short headはTA×Gastro〇の時に調べます。坐骨神経が脛骨神経と総腓骨神経に分岐した後、一番最初に総腓骨神経が支配する筋肉(最近位)がBiceps short headになります。それによって本当に腓骨神経だけが障害されているのか分かります。さらに短腓骨筋(PB 浅腓骨神経)まで調べると深腓骨神経か浅腓骨神経のどちらが障害されているか分かります。そこまでやる意義はあるか不明。

おまけですが筋電図界には再遠位から調べる掟があります。でもTAは深腓骨神経の最近位となります。本当に調べるべきはEDB(短シ伸筋)です。でもEDBはそもそも小さい・麻痺で萎縮があると検査むずいのでTAが代わりに採用されています。余談でした。

そして最後にG.med(中殿筋)を調べます。中殿筋は上殿神経という坐骨神経とは全く関係ない筋肉に支配されています。なのでTA×G.med×となるとL4障害を疑います。

G.med調べる時の注意点は、針はほぼ根元まで深く差します。骨盤部は肉が多いので、3-5㎝くらい刺さなくては筋肉に到達できないからです。下垂足と言う症状でも色々な原因が関与します。それを見極めるのに筋電図は非常に役に立ちますので、皆さん覚えておいてください。

まとめると

・TA×、Gastro〇、Biceps shor head×、G.med〇⇒腓骨神経麻痺

 おまけでPB×⇒総腓骨神経麻痺、PB〇⇒深腓骨神経麻痺。

・TA×、Gastro〇、Biceps shor head×、G.med×⇒L4

・TA×、Gastro×、G.med〇⇒坐骨神経麻痺

・TA×、Gastro×、Biceps shor head×、G.med×⇒L4/5/S1障害

 おまけでQuad(L3)、Ilio(L2)、Paraspinal(L/S)追加

以上です。またお願いします。

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すずき Suzuki