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感覚性失語: 聞いても分からない

高次脳機能障害シリーズ第3弾です。

前回は話したいけど、言葉が出てこない『運動性失語』を扱いました。今回はそもそも言葉を処理できない『感覚性失語』を扱います。

我々が言葉を聞いた際には、内容を処理・理解する必要があります。そのうち言葉の処理が出来なくなるのが感覚性失語です。別名ウェルニッケ失語。ちなみに理解は言語中枢で行います。感覚性失語は主に左の側頭葉のウェルニッケ野と言う、脳領域がやられるとなります。場所的にはコメカミと耳の間くらいです。一番の原因は脳卒中です。

ウェルニッケ野では、聞いた会話を処理を行います。

例えば『私は元気です』という文章があります。

でも脳に入る時には『わたしはげんきです』と言った感じで音の連続体として入力されます。これを通常は今までの経験・出身言語(我々なら日本語)で分節に区切ります。

つまり『わたしは げんき です』のように文節・単語で処理します。これがウェルニッケ野のお仕事です。そして『わたしは げんき です』を言語中枢に送り、『私は元気です』と理解します。

感覚性失語では先の『私は元気です』が、例えば『わた しはげ んきです』のように乱れます。もはや意味不明なので、それを送られた言語中枢もただの音の羅列と認識し、全く理解できないのです。

でもこの現象は我々にもよく起きます。それは聞いたことない・慣れない言語聞いた時です。例えばアラビア語やフランス語なんて、聞いても私は何言っているか、どこで区切れるのか全くわかりません。

この現象が母国語で起きるのが感覚性失語です。

一方話すことはスムーズできます。話すプロセスは言語中枢⇒ブローカ野の経路なので、ここは感覚性失語ではやられません、別部署です。(ちなみにこのプロセスがダメになると運動性失語になります)

でも聞かれたことを処理・理解できないので、無関係な事をスムーズに話します。例えば『今日の天気は?』に対して『ゴリラで時が話す』とか言います。

運動性失語と違うのは、『本人に自覚症状が乏しい』ことです。なので感覚性失語の人は多弁、しゃべり倒してきます。一方運動性失語の人は自覚症状があるので無口になる傾向があります。そこが二つを見分ける大きな違いです。

感覚性失語は失語症の中でも最も予後、治りが悪い一つです(一番は正確には全失語)。多くの方が日常生活に支障をきたし、周囲のサポート・環境調整が主な治療となっているのが現状です。失語症は2年程度は回復が続くといわれていますが、実際は2年経ってもあまり改善せず施設入所などになる方も大勢いらっしゃいます。

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すずき Suzuki