筋電図の基礎①:神経伝導検査の波形

ここでは総論から少し踏み込んで、神経伝導検査について見ていこうかと思います。

検査で画面によく見られる代表的な波形は下図のような単純な波です。

でも全ての神経でこんなキレイな訳ではなく、尺骨神経や橈骨神経では結構ごつごつして丘みたいに見える時もあるので注意してください。上図の英語の解説ですが

振幅Amplitude:CMAPの大きさ(≒神経線維の数)を表します。上図のように基線から波の頂点まで取る場合と、波の上下の頂点(Peak-to-Peak)を取る場合があります。Peak-to-Peakはinitial positive(波形が最初⇩にいき、⇧に戻るタイプ)などで用います。萎縮の強い筋での誘発筋電図で起きやすく、ノイズ・アーティファクトを排するために行います。

潜時Latency:刺激してからCMAPが記録されるまでの最小時間、つまり最も速い神経線維の反応速度を反映しています。これが延長してくると絞扼性障害(手根管や肘部管症候群など)を疑います。

持続時間Duration:波の波長の半分、波が上昇してから基線に戻るまでの時間のこと。これが伸びると『時間的分散』と言い、伝導ブロックという異常所見を疑います。詳しくは今度。

感覚神経SNAPも波となりますが、CMAPと形や名称は一緒です。ただAmplitudeは1000分の1くらい小さい波が特徴です。

もう一つ値で重要なのが下図のように2つの地点で刺激して得た波形のLatency(潜時)の差から、MNCV(Motor Neuron Conduction Velocity:神経伝導速度)を求めます。ちなみに個人的にはNCVを使用していますがMNCVでもNCVでもMCVでもSCVでも本質は同じですので気にしなくていいです。

ちなみにこれはCMAPでのNCVの測定方法です。CMAPでは神経筋接合部という部位がありますが、神経筋接合部の伝達速度は神経自体の伝達速度よりもず~~~っと遅いです。そのため神経筋接合部の影響を排して神経そのものの速度を見るために2点間距離、潜時差が必要となってきます。一方SNAPは神経自体をそもそも調べる検査ですので、1か所刺激するだけで求められます。

もう一つオマケの波形にF波があります。これは下図のように刺激部位から脊髄を通って戻ってきたCMAPみたいなものです。これ一つで末梢~中枢まですべて調べられのでお得です。でも得られる波形は小さいし調べられる神経も尺骨神経と脛骨神経(と正中)くらいなので、必ずCMAP/SNAPと組み合わせて判断します。

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以上で代表的な波形の説明となります。ありがとうございました。

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すずき Suzuki