またまた脱線です。
今回はウルージさんです。
黄猿に左鎖骨周囲をレーザーで打ちぬかれたシーン@シャボンディ諸島。
☆受傷起点☆
高エネルギーレーザーによって左鎖骨上部を貫通された。
☆診断名・治療方針☆
①:左腕神経叢損傷・麻痺
②:左鎖骨下動静脈損傷
③:左僧帽筋上部損傷
①:左腕神経叢損傷・麻痺
左上肢(肩~指まで 一般的なイメージだと腕と同じ)の機能が廃絶する、全廃になると考えられます。
腕神経叢とは左右にある、神経の集合体で、肩~指の運動・感覚全てを担っています。
下図(右腕ですが)のようにすごく複雑に神経(黄色)が絡み合っています。
参考:http://www.i-l-fitness-jp.com/aboutbody/nurve/02.html 大変ためになるサイトで、おススメです。
ウルージ氏は鎖骨上部という、ちょうど沢山の神経が合流したところで被害を受けているので重症です。
生き残った神経としては長胸神経(前鋸筋)、肩甲背神経(菱形筋)くらいで、肩甲骨のわずかな動きのみ可能です。
あまり機能的ではないです。
よって肩・肘・手首・指全ての機能が廃絶し、感覚もなくなります。
治療方法はあまりなく、手術行っても予後不良です。
手術は肋骨や脚から神経を持ってくる神経移行術や、筋肉・腱を取ってくる腱移行術が考慮されます。
②:左鎖骨下動静脈損傷
左鎖骨周囲には左鎖骨下動脈という、左腕へと血液を送る非常に大きな動脈が流れています。
大動脈からは大きな動脈が3つ出ていて、腕頭動脈・左総頸動脈・左鎖骨下動脈です。
総頸動脈はよくマンガで首を切られて、ブシュ―と出血する描写の原因となる動脈です。
鎖骨下動脈もそれレベルです。早期に血管を結んで止血しなくては、数分で失血死します。
しかしただ単純に止血しただけでは、左腕に血流が行かず壊死してします。
別の動脈を代わりに持ってくるバイパス術や、ステントグラフトという筒みたいなものをつける挿入術が必要です。緊急手術・集中治療室は必須です。
③僧帽筋上部損傷
①・②と比べるとかなり緊急性は低いです。肩が下がり、なで肩になってしまいます。
格闘家であるウルージさんにとっては大きな痛手ですが、やはり緊急度では劣ります。
筋肉を縫いあわせて終了です。
☆治療☆
①:神経縫合術、神経・腱移行術
②:動脈結紮術、バイパス術orステントグラフト挿入術
③:筋・筋膜縫合術
☆総括☆
失血死のリスク大。助かっても左上肢全廃、予後不良。
鎖骨の辺りは大切に、以上です。
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