今回は鋼の錬金術師、ハガレンのマスタング大佐のシーンです。
敵に付けられた左わき腹の傷を炎で焼いて止血し、敵を倒すシーンです。
個人的に結構好きなシーンですが、マジメに検討します。
☆受傷起点☆
敵に針?のようなもので脇腹貫かれた。
1番目の写真からは肋骨弓より下~脇腹を貫かれたようです。
なので左上腹部~側腹部の刺創と考えられます。。
☆診断・治療方針☆
①攻撃による腹部刺創、胃穿孔、結腸(大腸)穿孔、脾損傷、左肺下葉損傷
②炎による皮膚熱傷(Ⅲ度熱傷)
③熱傷による胃・腸・脾臓・肺の壊死。
①攻撃による腹部刺創、胃穿孔、結腸穿孔。
攻撃を受けたのは左上腹部~側腹部なので、下図赤い円内、胃~結腸(正確には横行・下行結腸)周囲となります。下図には無いですが胃の後ろ『肺』『脾臓』があり、高確率で損傷していることでしょう。
http://cancerinfo.tri-kobe.org/pdq/summary/japanese.jsp?Pdq_ID=CDR000006283
胃および結腸の穿孔(穴があく)ことで、おなかの中に胃液・糞便がぶちまけられます。
緊急で穴をふさがなくてはなりません。特に胃液は酸性で組織障害性が強いので緊急処置が必要です。
放っておくと腹膜炎⇒死亡です。腹痛現時点で相当でしょう、救急搬送・緊急手術です。
②炎による皮膚熱傷。(Ⅲ度熱傷)
傷口を防ぐほどの熱量なので、深い熱傷と考えられます。
熱傷にはその深さから、Ⅰ度、浅達Ⅱ度、深達Ⅱ度、Ⅲ度があり。この順番にひどい熱傷となります。
マスタング氏の場合は止血するほどの高熱なので、Ⅲ度熱傷メインと考えられます。
Ⅲ度熱傷のため、皮膚再生は望めない。そのためお尻やふとももから皮膚を取ってくる、植皮術(皮膚移植)が必要でしょう。また筋肉も広範囲にやられていると思われるので、よそから筋肉を持ってくる皮弁術が必要です。皮弁としては損傷部位が広範囲なので、広背筋(懸垂で鍛えられる脇の下の筋肉)が最適でしょう。手術後は瘢痕形成(スカー)によって皮膚が引きつりやすいので、伸ばすようなリハビリが必要です。
③熱傷による胃・腸・脾臓・肺の壊死。
これが一番キツイ。
①だけなら穴や傷を縫って終了でした。でも炎で止血した際に周囲の胃・結腸・脾臓・肺のいずれも高度に熱変性・壊死している可能性が高いです。そのため穴を防ぐだけでは不十分で、障害臓器の摘出が必要です。
手術としては胃切除・結腸部分切除・脾臓全摘・肺区域切除の適応となります。摘出後は再建術(残った臓器で補う)として残った胃と小腸を結ぶ再建術、人工肛門造設術が必須となります。
また胃切除後はダンピング症候群(低血糖発作・嘔吐下痢)、貧血などの後遺症が発生します。また脾臓取っているので肺炎球菌性肺炎になりやすくなります。
☆治療☆
①・③:胃切除・再建術(BillrothⅡorR-Y法)、結腸部分切除・人工肛門造設術、脾臓全摘、肺区域切除。
②:植皮術・皮弁術
☆総括☆
止血は炎でするもんじゃない。以上です。
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